高度 38,000フィートの機上でアメリカの近代史を思う

、今、中東のヨルダン行きの機上でこの駄文を書いているのだが、実は前日の同じ便に乗るはずが、台風明けの首都圏の鉄道網混乱で結局飛行機の出発までに空港にたどり着けなかった。タクシーに乗り換えようとしても、どのタクシー会社も今は無理との回答。愚娘など「空港まで歩けば~」などと涼しい顔で朝食のチーズパンをほおばりながら言う始末。口から出そうになった罵詈雑言をやっと自分の心の中だけで収めて、実際に口から発せられた言葉は「重い荷物が有るし、エヘヘ」。情けない、親の威厳などあったものではない。

1ケ月に渡る出張の初日で、けっこう緊張していたようで、「間に合わない!」と観念した瞬間から今に至るまで、グダグダ状態。お堅い国語学者に言わせると放心状態とか高揚された精神の昇華などと表現せよと言われるかもしれない。こんな状態のままかの地に行くのだが、既に精神的に勝ち目がない。いや、白黒をつけに行くわけでは無いのだが......  

ところが、このグダグダ状態の真っ只中に、このブログコーナーの編集子から「〇〇さん(私の名前)、原稿の締め切りが過ぎていますが」との短文メール。もう限界を超えそうである。否、もう超えている。そうなると妙に開き直って別の事を考えたり、どうすれば言い逃れが出来るかを考えたりするものだ。そう、逃避行動である。宿題の締め切り日に風邪をひくと言う子供っぽい発想をいかに正当化するか。

そこで考えたのが、この中東訪問後に向かうアメリカのアトランタについて。アトランタと言えばマーチン・ルーサー・キング(キング牧師)の生地。かの生地アトランタに向かう以上、キング牧師ばりに非暴力を貫き通し、投降を拒否する。モンゴメリーのバスボイコット運動を主導し、不服従を先導した牧師の教えを踏襲するのだ。オレはアトランタに行く→アトランタと言えばキング牧師→キング牧師と言えば不服従。そうだ、このブログなんて書く必要なんてないんだ!「締め切りなんてもう知らない!」ついに言ってやったぞ。我ながら見事な演繹法だ。

書いているうちにだんだん強気になってきた。このままだとストークリー・カーマイケルやマルコムXの思想にエスカレートしそうだ。いいか落ち着け、落ち着くんだ!マルコムXなど、散々暴力を主張しておきながら、本人は一度も暴力沙汰を起こさなかった。あとは任せた、とばかりにブラックパンサー党の荒っぽい奴らにやらせていた筈だ。今だったら、ただの扇動屋だ、の一言で済まされそうだ。それに、敬愛する映画監督のスパイク・リーもアトランタ出身なのだ。

などと高度38,000フィートで飲むドイツワインで煮沸された脳ミソで妄想した内容をつらつらと書いていたらあっと言う間に予定文字数に近づいてきた。不服従なんて必要なかった。

それにしても LH の客室乗務員さんがニコニコ微笑みかけてくれるのだが、小心者の自分としては圧倒され、こちらの顔が強張ってしまう。うーん、海外出張も悪くないな。欅坂46の握手会に一回くらい行けなくたって我慢しよう。


2018年10月 HM